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核不拡散に関する詳細資料

本資料は旧サイトに掲載していた4本の記事をまとめたものです。各節の末尾に原文の執筆時期を記しています。数値や状況は執筆当時のものです。一般の方向けの解説は核不拡散と核セキュリティをご覧ください。

目次
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  1. 熔融塩原子炉の燃料から原爆は作れないのですか?
  2. 軽水炉からの再処理プルトニウムで原爆は作れるのでしょうか?
  3. プルトニウムのもう一つの危険性「ダーティボム」
  4. 軽水炉でプルトニウムを燃やすと、どれ位Puを減らせるのでしょうか?

1. 熔融塩原子炉の燃料から原爆は作れないのですか?
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「熔融塩原子炉では、トリウムからU233が生産されています。このU233を何かの方法で取り出せば、U235と同じく、原爆が出来るのではないか?」と考えられる方がおられるかも知れません。

この答えは「イエス・バット・ノー」なのです。

まず「イエス」
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原子炉の中では、U233は(U235と同じように)核分裂する訳ですから、もし、U233を固めることが出来れば原爆になります。

次に「ノー」の説明
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熔融塩は、原子炉と配管の中を循環しています。密封されているので、水のように汲み出す、ということは出来ません。

でも、もし、原子炉を止めて、500度以上の熔融塩を抜き出すことが出来たとします(500度以下では熔融塩は固体になってしまうので、もはや汲み出すことは出来ません)。トリウムからU233が出来るときに、同時にU232という核種が出来ます。このU232が自然に崩壊して幾つかの核種ができ、これらは非常に強いガンマ線を出します(例えば、タリウム208という核種は2.6MeVのガンマ線を出す)。

また、原子炉の中では、核分裂によって核分裂生成物(いわゆる死の灰)が大量に出来ており、高い放射能を持っているので、兵員は近寄って操作できないだけでなく、所在も簡単に検知できてしまいます。

抜き取った熔融塩を運び出し、再処理をして、U233だけを分離するのは、国家レベルの大事業です。

そして、U233とU232は化学分離できないので、U233を扱うのは大きな遮蔽を必要とし、仮に原爆ができても、U232からの強い放射線で検知されてしまいます。(天然ウランからU235を濃縮することが可能なので、理論的にはU233を濃縮してU232を除去できるはずですが、U232量が微量なので、工業的には不可能です)

比較:ウランとプルトニウムの場合
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ウランは、日本の中でも原子燃料工場へ行けば、間近にウラン粉末等を見ることが出来ます(素手で触ったら怒られますが、放射能や毒性の危険は殆どありません)。

また、プルトニウムもガンマ線を殆ど出さず、(極端に言えば)素手で触ることができます。微量でも肺に吸い込めばいずれ癌に至るものの、物質自体の毒性は低いからです。筆者は一度、ロシアにある(旧ソ連時代の)核兵器研究所を訪問した際に、プルトニウム粉末の入ったガラス瓶を手渡され、驚いたことがあります。美しい紫色だったので、PuF₃だったのでしょう。

このように、プルトニウムはガンマ線を出さないので、外部から検知されることはありません。

さらに、U235の原爆は広島で使用されましたが、爆発するのが明らかだったので、米国で一度も実験しないまま原爆投下がなされました。一方、プルトニウムを使った原爆は複雑な構造をしている為、米国で一度実験された後、長崎に落とされました。

通常、核兵器にはPu239を主成分とするPuが用いられます。原発の使用済み燃料に含まれるPu240は、核爆発のような高速中性子に対してはPu239と同程度の核分裂確率(核分裂断面積)を持っていますが、自発中性子を放出するので、核爆発が早期に起きるため、核兵器の爆発力が小さくなるとされています。もっとも、強化型爆弾にすれば爆発力は増すとされています。

U233の爆発力は実証されていない
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U233は原子炉で核分裂するわけですから、何かの爆発力を持った爆弾になるのは確かです。しかし、本当にそうなのか? どの程度の威力があるのか? これが分からないと、U233原爆に脅威があるとは言えないでしょう。

米国の核実験結果によれば、次のような経緯があります。

1955年、米国国防省は14回の核実験を行なった。その内1回は、U233とPuを混ぜた直径75cmの球形の爆縮型原爆が製造され、核爆発実験を行なった。当初、U235とPuを混ぜて実験する予定だったが、それまでU233は一度も使用されたことがなかったので、使用可能か確認するために変更したものである。

その結果、「U235+Pu」原爆に比べ、3割小さい破壊力(22キロトン)だった。また、U233単独の原爆実験は実施されなかったので、結局、U233自体の爆発力は不明のままである。

U233の自発核分裂はU235と同程度であり、また、高速中性子によるイータ(反応度の指標)もU235と同程度か僅かに小さい程度なので、爆発力が小さい原因は不明である。(2011年8月追記)

結論
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今、世界では、パキスタンがU235の原爆をつくり、北朝鮮がプルトニウム原爆を作りました。国家が原爆を作るなら、放射線が殆ど出ないで、かつ威力が実証されたU235原爆、プルトニウム原爆を作るでしょう。わざわざ、検知されやすく、扱いが非常に困難で、爆発力が実証されていないU233原爆を作る意味はありません。

トリウム(U233)を使った熔融塩原子炉は、テロリストなどの集団レベルに対し、原爆製造を防衛できる障壁が非常に高い、ということと思います。

従って、U233で原爆は理論的には作れるであろう(イエス)が、誰もそんなことはしないであろう(ノー)、ということです。

補足:プロトアクチニウムを分離すれば「良い原爆」ができるのか
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なお、熔融塩原子炉の熔融塩の中に、Pa233(プロトアクチニウム)という元素が出来ます。もし熔融塩を抜き出すことができたとして、この熔融塩からPa233を化学分離すれば、このPa233が自然に崩壊して純粋のU233が自然に出来てくるから、これだとU232を含まない「良い原爆」ができるのではないか? という質問がありそうです。

FUJI原子炉の熔融塩量は50トン程度なので、原子炉停止直後に抜き取ったとして、Pa233からU233の1SQ(有意量:原爆が出来る最低限の量)=8kgを得るには、この50トンの熔融塩を抜き出すことになります。原子炉停止直後では、勿論、非常に高い放射線を出しているので、輸送トラックには何mものコンクリート遮蔽を付けないといけません。実質的に、原子炉停止直後に抜き出すことは不可能です。

それでは「少し時間がたって、放射能が低くなってから抜き取ればいいのでは?」と思うかも知れません。しかし、Pa233の半減期が27日なので、わずか2ヶ月も経つと3/4はU233に転換してしまい、Pa233は原子炉停止直後の1/4しか残りません。このように、Pa233だけを抜き取ることもできないのです。(2009年2月記載)

さらに、もし熔融塩原子炉を改造して、熔融塩を連続的に抜き出す配管を設置し、熔融塩からPa233を分離抽出する設備を付け、Pa233がU233に減衰するのを待てば、純粋のU233だけが取り出せるのではないか? ということが考えられます。

しかし、Pa233を抜き出すということは、原子炉に初期燃料としてのUやPuを投入しなければなりません。つまり、既に原爆に必要な核物質を十分に持っているということで、わざわざ面倒なプロセスを踏む意味はありません。

また、燃料塩からPaだけを抽出する技術は開発されていません。仮にその技術が実現できたとして、U232は幾つかの核反応で生成しますが、そのうちの3つの過程ではPa232が生成します。つまり、燃料塩からPaだけを分離できても、Pa232が同伴し、半減期1日でU232になって行きます。従って、Pa233が崩壊して生成したU233と一緒になってしまう訳です。(2013年5月追記)

  • Th232 (n,2n) → Th231 (β⁻) → Pa231 (n,γ) → Pa232 (β⁻) → U232
  • Th232 (γ,n) → Th231 (β⁻) → Pa231 (n,γ) → Pa232 (β⁻) → U232
  • Th230 (n,γ) → Th231 (β⁻) → Pa231 (n,γ) → Pa232 (β⁻) → U232

現在、世界中に多くのU235濃縮設備があり、例えばイランでのU235濃縮施設の核兵器との関連が問題になっています。さらに、世界中に大量のPuが蓄積・生産されています。これらの核拡散リスクを減らすには、トリウムサイクルが最善です。

熔融塩炉では「物理的に絶対、原爆ができない」のではありませんが、世界全体での核拡散リスクを大幅に減らすことができるということです。(2010年1月追記)

2. 軽水炉からの再処理プルトニウムで原爆は作れるのでしょうか?
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トリウム熔融塩炉でPuを消滅させる必要性は、軽水炉使用済み燃料から取り出されるPuが原爆材料になるからです。

しかし、原子力百科事典ATOMICAを見ると「原爆材料にならない」と書いています(結論で示すように、この記載は誤りです)。

原子炉の使用済燃料からの回収Puには各種のPu同位体が色々な割合で含まれる。この質的変化によってPu239が大部分を占める核兵器級Puとは異なり、このままでは核兵器用の材料になり得ない。

実際、日本では2000年頃まで「原子炉級Pu(軽水炉使用済み燃料から取り出されるPu)で原爆が出来るか否か」という議論がありました。学会の結論は出ていないものの「実質的には出来ない。できても核兵器としての威力はない」というムードだったように思います。

しかし実は、米国で使用済み燃料から取り出されたPuで1962年に原爆実験を行ない、20キロトンという長崎原爆並みの威力を持つ原爆が作れることを実証していました。そのことは1977年に公表されており、カーター政権がPu利用の国際規制を厳しくする政策を打ち出した背景だったようですが、日本では殆ど認識されませんでした。

なお、この原爆実験で使われたのは軽水炉使用済燃料ではなく、英国の黒鉛炉からの再処理Puです。

日本のPu利用を推進する団体とされる「原子燃料政策研究会」が2001年に「原子炉級プルトニウムと兵器級プルトニウム」という報告書を出しています。米国資料を検証した結果、次のように述べています。

原子炉級Puでも1キロトン程度の原爆は作れる。また、核融合を併用したブースター型原爆であれば、原子炉級Puでも(もっと威力を高められ)十分に役立つ、と結論できる。今回の調査で筆者自身反省したのは「原子炉級Puで核兵器を作ることは頭から不可能である(★)と検討を怠っていたこと」である。

(★:お歳を召した原子力関係者には、そう信じている方が多いようです)

その他、1998年に米国議会関係者が作成した資料があり、その中で上記★の背景を説明しています。

なぜ、原子炉級Puで核兵器を作ることは不可能、という間違った説が流布したのか? それは当時、NPT(核不拡散条約)を締結する代償として軽水炉を世界に提供することになったが、米国はNPT条約で、使用済み燃料からの回収Puで原爆を製造できるということを教えることが違法になってしまった為である。また、Pu240が高速中性子では核分裂する事実が無視されたこともある。

以上から「原子炉級Puで十分な威力を持った核兵器を作ることは可能」というのが世界の常識と言うことです。(2013年6月記)

参考文献

  • 「Additional Information Concerning Underground Nuclear Weapon Test of Reactor-Grade Plutonium」US-DOE
  • 「Reactor-Grade Plutonium Can be Used to Make Powerful and Reliable Nuclear Weapons」
  • 「Reactor-Grade and Weapons-Grade Plutonium in Nuclear Explosives」US-DOE資料の要約
  • 原子燃料政策研究会「原子炉級プルトニウムと兵器級プルトニウム」2001年

3. プルトニウムのもう一つの危険性「ダーティボム:放射能散布爆弾」
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核テロの一種に、いわゆる**ダーティボム(放射能散布爆弾)**があります。この危険性は日本では殆ど認識されていませんが、核爆弾と同様に重要な問題です。

米国議会は2011年に88頁もの報告書を出しています(「Dirty Bombs: Technical Background, Attack Prevention and Response」)。また、2016年の核サミットでオバマ大統領が「ダーティ・ボムに対する危険性」を指摘しました。

Fortunately, because of our coordinated efforts, no terrorist group has succeeded thus far in obtaining a nuclear weapon or a dirty bomb made of radioactive materials. But we know that al Qaida has long sought nuclear materials.

なぜプルトニウムが問題なのか
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放射線の人体への影響に関しては、外部被曝と内部被曝があります。内部被曝に関する放射性毒性は、水や食物と一緒に経口摂取した場合よりも、呼吸で吸入した場合の方が高い場合があります。その理由は、放射線の内、アルファ線は飛程が短く、体内に入った場合に影響が大きく現れ、また、肺等に吸入した場合は体外へ排出されにくいからです。

プルトニウム(Pu)はその典型例で、Puの粉末(直径5ミクロン)を吸入した時の線量換算係数(DCF)は、ICRP(国際放射線防護委員会)によれば、経口摂取した場合の約100倍の 3.2×10⁻⁵ Sv/Bq です。

ここで線量換算係数DCFとは、放射能が1ベクレルの放射性物質を摂取または吸入した時の人体への影響(シーベルト単位の被曝線量)を求める為の係数であり、放射性毒性は次式で計算できます。

[放射性毒性]= DCF ×[放射能]

なお、DCFは、物理的な半減期と、人体から排出される生物学的半減期の両方を考慮して定められています。また、成人の場合、50年の余命を想定し、寿命中の影響を考慮しています。所で、幼児は成人より放射線の影響を大きく受けますが、摂取量も少ないため、DCFは通常、成人で代表させることができます。

また放射能とは、1秒間の物質原子の崩壊数で、崩壊定数λと原子数Nから決まり、[λ・N]で計算できます。

Pu239について、以下に計算してみました。

  • 239gのPu239の原子数 N = 0.623×10²⁴ 個
  • λ(崩壊定数)は、Pu239の半減期(24,000年)から求められます λ = 0.693 ÷ (24000×365×24×60×60) = 9.16×10⁻¹³ /秒
  • 放射能[λ・N]= 9.16×10⁻¹³ × 0.623×10²⁴ = 5.71×10¹¹ ベクレル
  • [放射性毒性]= (3.2×10⁻⁵ Sv/Bq) × (5.71×10¹¹ Bq) = 1.82×10⁷ Sv

以上から、239gのPuがあれば、1820万人に平均1Svの被曝をさせられる計算になります。

つまり、角砂糖1個程のPuを空中散布すれば、76万人に1Svの被曝をさせられる計算になり、東京都の人口(1300万人)で割れば一人当たり約50mSvであり、この数字を聞いた途端に東京都民は逃げだし、無人の街となるでしょう。上記の50mSvは余命50年間の影響を示す値なので、年間当りでは一般市民の被曝限度(1mSv)と同程度ですが、一瞬で生涯被曝が確定する訳で、逃げ出すのは当然です。

更に、Puはセシウムのようにガンマ線を殆ど出さないので(★)、散布装置を製造するのが容易で、かつ製造後も検知が殆ど不可能な点も問題です。また、爆発させる必要さえもありません。つまり「爆弾」でなくても、ドローンなどで空中から散布すれば良い訳です。

(★:セシウムは約1MeVの強いガンマ線を出します。一方、プルトニウム(Pu239等)は、アルファ線を出す時にガンマ線も出しますが、セシウムの数十分の一の非常に弱いガンマ線です)

なお付記すると、死に至る被曝量は数Svとされているので「角砂糖5個分で日本人全員死滅」というネット上の噂は真実ではありませんが、影響が大きいのは確かです。

医療用放射線源との比較
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「ダーティ・ボム」には、医療用の放射性物質、例えばコバルト60を盗取して散布することも含まれます。どちらも放射線を出し、人体に影響を与えますが、その影響は大きく異なります。

医療用放射線源(コバルト60など) プルトニウム
放射線の種類 ガンマ線 主にアルファ線
放射線の影響範囲 遠くまで飛ぶ 極めて狭い範囲
被曝の影響 外部被曝 吸入すると内部被曝
製造者への影響 爆弾のようにすると甚大な影響があり、製造が困難 製造者に放射線の影響が殆ど無い
盗取等の輸送時の問題 厚い鉛やコンクリートで遮蔽しないと輸送できない 遮蔽は不要で、輸送は簡単
検知 ガンマ線を出すので、検知が容易 アルファ線なので、検知は殆ど不可能

元々、医療用放射線源は患者1名に影響を与える目的なので、散布してしまうと薄まってしまい、死に至らしめる量を大勢に与えることはできません。また外部被曝なので、散布されても現場から逃げれば、それ以上の被曝をせずに済みます。

一方、Puによる被曝は、吸入すれば一生被曝することになります。市販の放射線検知器では検知できないので、逃げるという発想ができないでしょう。

時間とともに高まるリスク
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現時点では、分離されたPuは少量で、かつ限定された場所のみに存在するので、盗取は困難に思えます。しかし、軽水炉の使用済み燃料は今後、世界中に数十万トンも発生し、それらは100年も経つと強い放射能が減衰し、そのままでダーティ・ボムの材料となります。

(2015年9月記載。2017年4月に医療用線源との比較を補記)

4. 軽水炉でプルトニウムを燃やすと、どれ位Puを減らせるのでしょうか?
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トリウム熔融塩原子炉はPuを効率良く消滅できると書きましたが、Puは他の炉型、例えば軽水炉でも燃やせます。では「軽水炉でPuを燃やすと、どれ位Puを減らせるのか?」という考察を試みました。

概算(2010年時点)
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1)U燃料のみ(プルサーマル無し)

日本には軽水炉が55基あって、毎年20トンずつ燃料を装荷、つまり毎年20トンを取り出しているとします。年間で約1000トンが取り出されるわけです。取り出し燃料の中には1%のPuが含まれるので、毎年10トンのPuが出てきます。

再処理しないとすると、50年か100年もすれば強いガンマ線は減衰し、地中にPu鉱山が出現する訳です。

2)全量プルサーマル

一方、再処理をして、上の10トンのPuを100トンのU238で希釈してプルサーマル燃料にして装荷すると、数年後にはおよそ6割になるので、日本全体では4トン減らせます。(ネットの生産量では 10−4=6トン)

3)PuをThと混ぜて使用

上の10トンのPuを100トンのTh(トリウム)で希釈してPu-Th燃料にして装荷すると、数年後にはおよそ半分(5トン)に減少して、残りは5トンになります。(上の100トンのThからはPuが生まれないので、2番より1トン分のPuが削減できます)。つまり、日本全体で年間5トンの削減ができます。(ネットの生産量では 10−5=5トン)

まとめ

年間のPu生産量
1)プルサーマル無し 10トン
2)プルサーマル 6トン
3)プルトリ・サイクル 5トン

このような時代が50年100年と続くと考えると、文字通り五十歩百歩で、消滅からは遠いと言えます。

なお「軽水炉でも減少はしているのだから、繰返せば最終的にPu消滅ができるのでは?」と思われるかも知れませんが、固体MOX燃料の再処理は困難です。一方、熔融塩炉は燃焼制限というものがなく、炉内で引き続き燃焼させることができます。(2010年3月記)

より正確な計算(2018年時点)
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① 熔融塩炉 FUJI-Pu

FUJI-Puは、100万kWeで1年間全出力で運転した場合は、全Pu量で約900kgが消滅する。

なお、FUJIは熱効率が高いので、軽水炉と同じ電気出力で比較するのではなく、同じ熱出力(核分裂量)で比較してみると、上記数値は1割以上大きくなり、更にFUJIの優位性が増す。

② 全MOX炉(大間ABWR)

100万kWeの全MOX-ABWRを想定する。1年間全出力で運転した場合は、全Pu量で約400kgが消滅する。

FUJI-Puに比べて消滅量が小さい理由は、母材がUなのでPuが再生産されること、炉心設計の観点からU燃料棒も必要なこと、固体燃料なので燃焼度に制限があること等による。

なお「大間ABWR(138万kWe)は年間1.1トンの核分裂性Puを消費できる」という説明が見受けられるが、この値はPuf投入量であって、消滅量ではない。

③ プルサーマル(1/3プルサーマル)

MOX燃料が炉心全体の1/3というプルサーマルを想定する。全Pu消滅量は上記全MOX-ABWRの1/3の約130kgと推定される。

なお、U炉心のBWRでは毎年約230kgのPuが生成するので、その2/3だとPuが約150kg生成する。従って、1/3プルサーマルでは、炉心全体では年間約20kgの増加である。

(注記:ここでは簡単化の為に1年間の連続運転期間を想定した。40年間の総計を求める場合は、定期検査の為の停止期間を含める必要がある)