私たちについて #
特定非営利活動法人 トリウム熔融塩国際フォーラム(International Thorium Molten-Salt Forum、略称 ITMSF)は、トリウム熔融塩炉(溶融塩炉)とそれに関わる燃料サイクルについて、研究・設計・普及活動を行う非営利団体です。
2008年10月にNPO法人として登録し、翌2009年1月に第1回総会・研究会を開催しました。会員は原子力や化学の研究者・技術者に加え、この分野に関心を持つ市民で構成され、海外にも会員がいます。
初代理事長は、THORIMS-NES構想を提唱した古川和男(1927-2011)です。
また、第4世代原子炉国際フォーラム(GIF)の熔融塩炉運営委員会に、オブザーバーとして参加してきました。
目指していること #
エネルギーをめぐる状況は、私たちがこの活動を始めた頃から大きく変わりました。気候変動への対応が急務となり、一方でデータセンターをはじめとする新たな電力需要が急速に伸びています。同時に、核燃料の供給網が国際政治に左右されることが誰の目にも明らかになりました。
そして、半世紀にわたって解かれないまま残っている問題があります。
- 使用済み燃料が行き場を持たないこと
- 分離されたプルトニウムが蓄積し続けていること
- ウランの利用効率が1%程度にとどまっていること
これらはいずれも、燃料サイクルを閉じられていないことに由来します。そして固体燃料という出発点を選ぶ限り、閉じ込めとリサイクルが同じ壁を奪い合うため、この問題は構造的に解きにくい——というのが、半世紀の経験から見えてきたことです。
液体燃料は、この出発点そのものを共有していません。 私たちがトリウム熔融塩炉に取り組む理由は、ここにあります。
ただし、確実だと申し上げるつもりはありません。 熔融塩炉が商用技術として成立するかどうかは、まだ分かりません。材料の長期実証も、化学処理の商用規模での実現も、規制の枠組みも、これから解くべき課題として残っています。
私たちが確かだと考えているのは、次の二点だけです。
- 固体燃料と湿式処理という入口からの探索には、半世紀と膨大な資源が投じられ、どこが難しいのかがよく分かった
- 液体燃料という入口は、まだ本格的に試されていない
試されていない道が残っているなら、そこには探索の価値がある。 これが私たちの立場です。
資源に乏しい日本にとって、エネルギー技術の選択肢を自ら持つことには意味があると考えています。かつて日本で構想され、いま各国が別々の形で追い始めている技術について、日本の中に知見を残し、国際的な議論に参加し続けることが、この団体の役割だと考えています。
このサイトについて #
このサイトは、次の三つの層で構成しています。
基礎知識 — トリウム熔融塩炉をめぐる報道を読み解くための情報です。数式を使わず、専門用語には説明を添えています。
THORIMS-NES — 古川和男が提唱し、当NPOが紹介してきた構想です。発電炉FUJI、加速器熔融塩増殖施設AMSB、地域化学処理センターという三つの施設に役割を分ける、システム全体の設計です。
業界ニュース・活動記録・書籍紹介 — 各国の動向と、当NPOの活動の記録です。
編集方針 #
推進する立場から書いていますが、困難も併記します。 過大な期待は、裏切られたときに技術そのものへの不信に変わります。実証されていないことは実証されていないと書き、他の技術についても公平に扱うよう努めています。
設計ごとの違いを区別します。 「熔融塩炉」と呼ばれるものの中身は大きく異なり、安全性の根拠も核不拡散上の性格も設計によって変わります。一括りにした説明は避けています(3つの質問で分かる、熔融塩炉の見分け方)。
出典を示します。 数値や事実には、可能な限り出典を添えています。旧サイトから引き継いだ資料には、執筆時期を明記しています。
表記について #
本文では「熔融塩」の表記を用いています。この分野の日本語文献で長く使われてきた表記であり、当NPOもこれを踏襲しています。一方、報道や一般的な文書では「溶融塩」が使われることが多いため、各ページの初出では「熔融塩炉(溶融塩炉)」と併記しています。どちらも同じものを指します。
沿革 #
| 1980年 | 古川和男が加速器熔融塩増殖施設(AMSB)を考案 |
| 1983年 | トリウム熔融塩核エネルギー協働システム(THORIMS-NES)を提唱 |
| 1985年 | 小型熔融塩発電炉FUJIを考案 |
| 2008年10月 | NPO法人「トリウム熔融塩国際フォーラム」設立。古川和男が初代理事長に就任 |
| 2009年1月 | 第1回総会・研究会を開催 |
| 2011年12月 | 古川和男 逝去 |
| 2016年10月 | 国際原子力機関(IAEA)が熔融塩炉に関する初の技術会合を開催 |
活動の詳細は活動記録をご覧ください。
創設者について #
古川 和男(ふるかわ かずお、1927年2月13日 - 2011年12月14日)
理学博士(京都大学)。ウクライナ科学アカデミー外国会員(終身)。
| 1951年 | 京都大学理学部化学科 卒業 |
| 1952年 | 東北大学金属材料研究所 助手。無機液体構造化学の研究に従事 |
| 1960-61年 | ロンドン大学バークベック・カレッジにて統計熱力学的研究、X線液体構造解析に従事 |
| 1961年 | 東北大学 助教授。液体金属・熔融塩の構造・物性論を研究 |
| 1962年 | 日本原子力研究所に出向。高温融体の原子力利用研究に従事 |
| 1966年 | 同 ナトリウム研究室長。液体ナトリウム基礎技術の総合開発に従事 |
| 1968年 | 米国オークリッジ国立研究所を訪問し、熔融塩実験炉MSREの順調な運転を知る |
| 1971年 | 同 高温融体材料研究室長。核分裂炉・核融合炉・加速器炉への応用に従事 |
| 1980年 | AMSBを考案。U-233核燃料の大量製造を可能にする |
| 1983年 | 東海大学開発技術研究所 教授。THORIMS-NESを提唱 |
| 1985年 | FUJIを考案。炉心黒鉛の取替えと連続化学処理を不要にする |
| 1992年 | ウクライナ科学アカデミー外国会員(終身)に推挙 |
| 1996年 | 東海大学を退職。トリウム熔融塩国際研究所 代表 |
| 2008年 | NPO法人トリウム熔融塩国際フォーラムを設立、初代理事長に就任 |
液体金属と熔融塩の物性研究から出発し、ナトリウム冷却炉の開発を経て熔融塩炉に至った経歴が、THORIMS-NES構想の背景にあります。高温の融体を扱うという一貫した専門性が、「原子力は化学工業の一種として液体を作業媒体に使うべきだ」という主張につながりました。
著書に『原発安全革命』などがあります(書籍紹介)。