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AMSB — 加速器熔融塩増殖施設

AMSB(Accelerator Molten-Salt Breeder、加速器熔融塩増殖施設)は、THORIMS-NES構想において核燃料を作る役割だけを担う施設です。発電はしません。

なぜ必要なのか — 「タネ」の問題
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トリウムは、そのままでは燃えません。中性子を吸収してU-233に変わって初めて核燃料になります。したがってトリウム利用を始めるには、最初の核分裂性物質、いわば「タネ」がどこかから必要です。

この問題は現在も解けていません。核燃料をどこから調達するかで述べたとおり、米国のFlibe Energyは余剰プルトニウムを、他の企業は高濃縮度のウランをその供給源として見込んでいます。半世紀前に固体燃料のトリウム利用を挫折させたのも、高濃縮ウランという「タネ」を断たれたことでした。

AMSBは、この問題に対する構想上の答えです。他国の濃縮ウランにも、余剰兵器材料にも依存せず、トリウムから直接U-233を作り出す——それが目的です。

仕組み
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原理は**核破砕反応(スポレーション)**です。約10億電子ボルトに加速した陽子を重い原子核に衝突させると、大量の中性子が飛び出します。この中性子をトリウムに吸収させれば、その数だけU-233に変換できます。

加速器で核燃料を作るという発想自体は、カナダのW.B.ルイスが提唱し、カナダのA.A.ハームズ教授らが基本アイデアを著書で示したものです。物理的な基礎はカナダ中心の努力で確立されました。

古川和男らの貢献は、これを工学的に成立させる方式を示したことにあります。

陽子を狭い一点に打ち込むと、そこに激しい核的・熱的・化学的な負荷が集中します。固体の標的では耐えられません。そこで古川らは、ターゲットとブランケットを兼ねる熔融フッ化物塩の浴の中でトリウム核と反応させる方式を考えました。

直径約4m、深さ約7mの熔融塩タンクの上部に渦を形成させ、そこへ陽子を入射させます。液体なので照射損傷が起こらず、熱の除去も容易です。炉化学的な問題も核分裂炉と大差ありません。

塩の中でU-233の濃度が増えてきたら、汲み出して直接FUJI発電炉へ送ればよいのです。抜いた分にはトリウム塩を補充し、U-233の濃度をほぼ一定に保ちます。

液体であることが効く
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ここでも液体燃料であることが効いています。

固体の標的なら、激しい照射を受けて損傷し、定期的に交換しなければなりません。交換した標的からU-233を取り出すには、また別の工程が要ります。液体なら、損傷という概念がなく、できた燃料はそのまま汲み出せます。

熔融塩が「核反応・熱輸送・化学処理の三つを兼ねる作業媒体」であるという古川の主張は、AMSBにおいて最も分かりやすい形で現れています。

残された課題
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構想の成否を分けるのは、大電流の陽子加速器です。

AMSBのエネルギーバランスで詳しく検討していますが、必要とされるのは1GeV・300mA級の加速器です。日本のJ-PARCはエネルギーとしては十分すぎる性能を持ちますが、電流値が2桁ほど足りません。

原文では「大容量の加速器・入射孔技術開発以外に大きな技術的困難はない」としていますが、これは楽観的な見立てだと考えるべきでしょう。加速器駆動システムは世界的にも実証段階に至っていません。

また、発電炉ではなく燃料製造施設である以上、そのエネルギー収支が成立するかという根本的な問いがあります。この点の検討がAMSBのエネルギーバランスです。

地域センターという配置
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AMSBは、各地の発電所に併設されるものではありません。世界に20〜30か所の「地域センター」に集中立地されるという構想です。

熔融塩は優れた化学処理媒体でもあるため、複雑な核燃料増殖サイクルを単純・合理的にまとめることができます。AMSBおよび化学処理・廃棄物処理施設はプロセス施設であり、相対的に強い保障措置を要します。したがって集中管理が合理的です。

そして重要な点として、「安定連続運転が使命の公共的発電所」とは本質的に性格が異なります。 化学処理はバッチ方式でよく、開発が容易になります。

  • 発電所は数多く分散し、単純に、連続運転する
  • 地域センターは少数に集中し、複雑な化学を、バッチで扱う

性格の違う仕事を、性格の違う施設に分ける。 これがTHORIMS-NESの基本構造です。

各発電炉の寿命が終わったあとは、核燃料塩を地域センターへ持ち帰ってリサイクルします。核物質の輸送量も廃棄物量も抑えられます。

現代の文脈で
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役割を分担させるという考え方は、各国で独立に現れています。ロシアが検討している、高速炉で処理できるマイナーアクチノイドは高速炉が担当し、化学的に扱いにくいものだけを熔融塩炉が引き受けるという構想もその一例です(世界の熔融塩炉計画)。

また、中国はトリウム熔融塩炉と並行して加速器駆動システムの開発を進めており、初期燃料のU-233を加速器で大量製造するという道筋を描いています。これはTHORIMS-NESが提示した構造とほぼ同じです。