THORIMS-NES
THORIMS-NES(THORium Molten-Salt Nuclear Energy Synergetic System、トリウム熔融塩核エネルギー協働システム)は、古川和男が提唱した、トリウム熔融塩炉を中核とするエネルギーシステムの構想です。当NPOはこの構想の紹介を活動の柱としてきました。
三つの仕事を、別々の施設に分ける #
この構想の最大の特徴は、原子力に必要な仕事を一基の炉に集約せず、性格の異なる三つの施設に分離する点にあります。
| 施設 | 役割 |
|---|---|
| FUJI(熔融塩発電炉) | 電気を生む。自給自足で運転し、連続的な化学処理を持たない |
| AMSB(加速器熔融塩増殖施設) | 加速器を使ってトリウムから核燃料U-233を生産する |
| 地域化学処理センター | 燃料塩の処理を集約して行う |
なぜ分けるのか。燃料を増殖させる仕事と、電気を作る仕事とでは、必要な技術も難しさもまったく違うからです。
熔融塩炉の困難のうち特に重いものの一つが、運転しながら燃料塩を化学処理する設備です。増殖を発電炉の中で行おうとすると、この難しい化学を発電所ごとに抱え込むことになります。THORIMS-NESは、その仕事を専用の施設に外出しすることで、発電炉の側を可能なかぎり単純に保とうとします。
これは「未知の要素を一度にいくつ抱え込むか」という判断です。詳しくは商用炉をつくるという壁で述べています。
30年前の提案を、いま読み直す #
THORIMS-NESが構想されたのは30年以上前です。しかし困難をどう切り分けるかという観点から見ると、その発想は現在の議論にも通じます。
実際、役割を分担させるという考え方は各国で独立に現れています。ロシアが検討している、高速炉で処理できるマイナーアクチノイドは高速炉が担当し、化学的に扱いにくいものだけを熔融塩炉が引き受けるという構想も、その一例です(世界の熔融塩炉計画)。
一基の炉にすべてを背負わせない。 THORIMS-NESが提示したのは、炉の設計というより、システム全体の組み立て方についての一つの解答でした。
各論 #
- FUJI — 熔融塩発電炉 — 増殖をあきらめることで得た単純さ
- AMSB — 加速器熔融塩増殖施設 — 「タネ」問題への回答
- AMSBのエネルギーバランス — 陽子1個から中性子は何個出るか
- 開発の段取り — プルトニウム処理から始める道筋
- 経済性の見積もり — 過去の試算と、その前提の変化
前提となる知識 #
THORIMS-NESの位置づけを理解するには、次のページが助けになります。
- 燃料サイクルを閉じるという難題 — なぜ液体燃料が必要とされるのか
- 3つの質問で分かる、熔融塩炉の見分け方 — FUJIが設計空間のどこに位置するか