↓ メインコンテンツへスキップ

開発の段取り

このページで紹介する開発計画は、2000年代に策定されたものです。年次や国際協力の前提は現在の状況と合いません。構想の骨格と、現在も有効な部分を区別して記述しています。

THORIMS-NESは、いきなり完成形を建てる構想ではありません。すでにある問題を引き受けながら、段階的に移行するという道筋が描かれていました。

基本の考え方:厄介者から始める
#

構想の出発点は、現在の原子力が抱えている厄介者を、資源として使うという発想です。

世界には行き場のないプルトニウムが蓄積しています(核不拡散と核セキュリティ)。トリウム利用には最初の「タネ」となる核分裂性物質が必要です。この二つは噛み合います。

FUJIとAMSBでプルトニウムを燃やしながら、同時にU-233を生産する。プルトニウムが減り、U-233が増えていけば、自動的にトリウムサイクルへ移行できる——これが基本の筋書きです。

三つの計画
#

原文では、次の三段階が示されていました。

D計画 — 使用済み燃料からプルトニウムのフッ化物塩を得る
#

使用済みの固体ウラン燃料をフッ素化し、プルトニウムと超ウラン元素のフッ化物塩を分離します。この乾式熔融塩技術は、フランスが開発したフッ素化技術を基礎に、旧ソ連の高速増殖炉燃料再処理用の計画としてほぼ完成していました(チェルノブイリ事故で高速増殖炉計画とともに放棄)。

この方式の利点は、水や有機溶剤を使わないため核臨界の問題がなく、また固体の酸化物燃料に作り戻す必要がないことです。極めて単純・小型かつ経済的な装置になります。軍用にならない不純なプルトニウムのフッ化物塩を得ればよいからです。

F計画 — FUJIでプルトニウムを燃やしながらU-233を作る
#

FUJIの開発を終えたら、上記のプルトニウムフッ化物塩を燃料として、プルトニウムを燃焼処理しつつ、同時にU-233を生産しながら発電します。

プルトニウム処理を加速するには、燃料塩から適度にU-233を分離し、プルトニウム塩を追加・燃焼させるのが適切です。得られたU-233は、新しいFUJI発電所の始動に使います。

A計画 — AMSBによるU-233の増産
#

少し遅れてAMSBを完成させ、U-233の生産増殖を開始します。システムが拡大する段階では、より多くのU-233が必要になるからです。

初期にはプルトニウム燃焼型のAMSBによって、消費するプルトニウムの2〜3倍のU-233生産が実現できるとされています。

具体的な開発プロジェクト
#

技術的な基礎については、原文は次のように整理しています。

米国オークリッジ国立研究所の蓄積(1947〜76年)があり、熔融塩実験炉MSRE(熱出力7,500kW)が4年間無事故で運転されました(1965〜69年)。この膨大な基礎データは全て公開されています。

ナトリウム冷却高速炉への国際投資の成果が機器開発に流用できます。熔融塩は同時に燃料でもありますが、機械工学的にはナトリウムのような強い化学活性と熱衝撃性がないため、高速炉の経験を余裕をもって活用できるとされています。

そのうえで、次のプロジェクトが計画されていました。

プロジェクト 内容
miniFUJI MSREとほぼ同規模だが発電可能なパイロットプラント。7,000kWe、炉本体は直径1.8m・高さ2.1m。概略設計は完了済み
化学処理法の開発 固体ウラン燃料のフッ素化処理法を整備実用化する。D計画の主体
FUJI 10〜30万kWeの実用小型発電炉の実証
AMSB 核燃料生産増強用施設の開発

miniFUJIの位置づけが重要です。 MSREは発電を行っていませんでした。発電まで含めて成立することを、小規模で実証する——これが最初の一歩とされていました。

現在の状況との差
#

原文には具体的な年次と金額が示されていましたが、これらは2000年代の見通しであり、そのままでは成立しません。

国際協力の前提が変わりました。 原文は「日・米・ロシア三国共同計画」を掲げ、ロシアの研究所が建設予定地まで選定していたと記しています。現在の国際情勢では、この枠組みは成立しません。

年次はすべて過ぎています。 AMSBの技術完成を2025年頃、システム全体の完成を25〜30年後としていましたが、実際にはminiFUJIも建設されていません。

しかし、道筋の骨格は古びていません。 次の点は現在も有効だと考えています。

  • プルトニウム処理を引き受けながら移行するという発想。米国が余剰プルトニウムを新型炉開発企業に供給しようとしている現状は、まさにこの構図です(核燃料をどこから調達するか)
  • 小さく作って実証してから大きくするという段階論。商用炉をつくるという壁で述べたとおり、プロトタイプと商用の間には別種の壁があり、この段階を飛ばすことはできません
  • 難しい化学処理を発電炉から切り離すという構造。未経験の要素を一度に抱え込まない判断です
  • 軍用に適さない不純なプルトニウム塩でよいという割り切り。純度を追わないことが、装置を単純にし、核拡散上も有利に働きます

中国が歩んでいる道
#

現在、この道筋を実際に歩んでいるのは中国です。

実験炉TMSR-LF1は黒鉛減速・オンライン再処理なしの小型炉で、FUJIと基本構成が同じです。そして初期燃料のU-233を、並行して開発する加速器駆動システムで大量製造するという構想を持っています。これはTHORIMS-NESの構造とほぼ一致します。

構想が提示されてから30年を経て、その道筋を別の国が歩んでいる——という状況にあります。