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FUJI — 熔融塩発電炉

FUJIは、THORIMS-NES構想において電気を生む役割だけを担う熔融塩発電炉です。出力10万〜30万kWe級の小型炉として設計されています。

設計思想:あえて増殖をあきらめる
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FUJIを理解する鍵は、何をしないと決めたかにあります。

米国オークリッジ国立研究所が目指した熔融塩増殖炉(MSBR)は、発電しながら同時に燃料を増やす炉でした。しかしそのためには、運転しながら燃料塩を連続的に化学処理する設備が必要になります。商用炉をつくるという壁で述べたとおり、この連続化学処理こそが、熔融塩炉の未経験領域のうち最も重いものの一つです。

FUJIはこれを手放しました。増殖を狙わず、燃えた分を炉内で再生する「自給自足」に徹するという選択です。その結果、次のことが可能になりました。

  • 炉本体よりも開発が難しい連続化学処理装置が要らなくなる
  • 炉内で一様に燃焼が進むよう炉心を設計することで、黒鉛の取り替えが不要になる
  • 発熱密度が下がり、燃料塩を減らして黒鉛減速材の割合を増やせる。中性子の減速能が高まり、自給自足が成立する

炉本体は、単純な熔融塩のタンクになります。 炉内にあるのは燃料塩と、容積の90%を占める黒鉛だけです。

これは「性能を落とした妥協」ではなく、未知の要素を一度に抱え込まないという判断です。増殖という難しい仕事は、AMSBという別の施設に外出しされます。

運転の姿
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核燃料はU-233を最初に供給するだけで、あとは不足してくるトリウム塩を追加します。その量は日あたり数百グラム程度で、補給は半年に一度ほどで済みます。

炉の寿命の間、他の核物質はほとんど取り扱う必要がありません。解体後に全燃料塩を化学処理工場へ持ち帰ればよく、核物質を路上輸送する総量は数十分の一に減ります。核燃料にはU-233、U-235、Pu-239のいずれも使用できます。

運転中は、クリプトン、キセノン、トリチウムといった気体の放射性物質を常時除去します。環境へ放出されやすいこれらの放射能が、事故時にも最小限に抑えられます。

熔融塩炉としての構成
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FUJIの燃料塩は、フリーベ(LiF-BeF₂、リチウムはリチウム7に濃縮)に、親物質としてトリウムをThF₄の形で混ぜたものです。ここに核分裂性物質として重量で約1%のUF₄またはPuF₃を加えます。約500℃以上で液体になります。

この燃料塩と黒鉛減速材、そして数本の制御棒(多くは黒鉛製)で炉心を構成します。燃料塩自体を炉心の外へ循環させ、熱交換器を介して熱を取り出します。

炉心で発生した熱は、中間熱交換器を介してNaBF₄-NaFからなる二次冷却材へ伝わり、さらに蒸気発生器で発電用の水蒸気を作ります。ナトリウム冷却高速炉と似た三系統の構成ですが、熔融塩炉では高速炉以上の水蒸気温度(538℃程度)と熱効率(44%程度)が期待できます。

熱効率が高いということは、軽水炉に比べて廃熱が半分近くに減ることを意味します。発電の代わりに650℃程度の工業用熱として利用することも既に可能で、さらに百度ほど高めることも現在の設計でほぼ問題なく、水素製造にも対応できると考えられています。

熔融塩炉の特徴(原文より)
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以下は旧サイトに掲載していた13項目です。液体燃料であること、親物質にU-238ではなくTh-232を用いることから生じる特徴を整理したものです。

  1. 燃料の成型加工が不要である(燃料塩の製造・調整は必要だが、比較的容易にできる)
  2. 燃料の放射線損傷・変形等を考慮する必要がなく、核物質の消耗分の追加注入のみで済み、燃料交換が不要である
  3. 転換率が1.0近傍と高いので、核物質の追加もわずかな量で済み経済的である
  4. 再処理操作の必要性が少ない(バッチ処理をするにしても数年に1回程度であり、中性子経済性や核燃料物質の節約にあまり意を用いなければ、炉寿命期間中、再処理無しで済む可能性もある)
  5. 燃料塩の追加や濃度調整が可能であるから、余剰反応度を殆ど持たせず、低インベントリで、核的逸走事故の恐れのない炉が設計できる
  6. 燃料発熱体自体が膨張係数の大きい液体であり、黒鉛はほとんど膨張しないので、大きい即発性の負の温度係数が期待できる
  7. U233-Thサイクルとすれば、超ウラン元素は殆ど生じない。Pu-Thサイクルの場合でも、Pu-U固体燃料炉に比較して超ウラン元素の生成が少なく、Puの消滅速度が大きい
  8. 廃棄物、特に再処理に伴う廃棄物発生量が少ない
  9. 液体燃料としての熔融塩は安定で取り扱いやすく、常圧のまま使用できる(沸点は1400℃以上、炉心出口温度700℃程度)
  10. 炉心内の減速材兼構造材は微小孔等方性黒鉛で、炉容器および配管・機器等は改良型ハステロイN合金で作られ、それぞれ炉寿命期間中、燃料塩との両立性が良く、十分な構造強度を維持できる見通しである
  11. 燃料が炉心外部にも循環するので、実効遅発中性子割合が下がるという問題と、ポンプ不具合時等の対処問題がある。安全審査上の解析評価項目については今後の検討に待たねばならないが、万一燃料塩が炉外に流出しても再臨界の恐れは全くない
  12. U233に付随して発生するガンマ線により、核拡散抵抗性上の優れた特長がある
  13. トリウムの利用により、核燃料資源をウラン以外に拡張でき、またプルトニウムの利用・消滅にも使えるなど、核燃料の多面的運用に寄与できる

11項目目のように、不利な点も併記されているのが元の資料の姿勢です。安全性についての詳細な検討は熔融塩炉の安全性をご覧ください。

起動時の中性子源
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原子炉を起動するときには、最初の中性子が必要です。米国の熔融塩実験炉MSREでは、現在の軽水炉と同じく中性子を発生する物質を中性子源として使っていました。

その後、MSBRのような実用炉の設計においては、燃料自体が発生する中性子が使えることが分かり、毎秒10⁷個の中性子が発生すると評価されています。

具体的には、U-233とU-234から出てくるアルファ粒子が、熔融塩の中のリチウム、ベリリウム、フッ素に吸収されて中性子が出てくる核反応によるものです。

  • Li7 (α,n) B10
  • Be9 (α,n) C12
  • F19 (α,n) Na22

参考文献:ORNL-TM-2685「Inherent Neutron Source in MSRE with Clean 233U Fuel」

世界の中での位置づけ
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FUJIの構成——燃料塩・黒鉛減速の熱中性子炉・トリウム——は、世界の熔融塩炉計画のB群にあたります。

注目すべきは、中国が実験炉TMSR-LF1で歩んでいる道筋が、この構成とほぼ同じである点です。黒鉛減速で、連続的なオンライン再処理を持たず、小型から始める——FUJIが提示した設計思想と重なります。